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(一社)信州千曲観光局 GreenDestinationsTOP100選への道

職員レポート

2025.04.24

2024 Green DestinationsTOP100選の優良事例に千曲市が選出

 (一社)長野県観光機構では、県内7地域と協働で「持続可能な観光地域づくり事業」を実施しており、国際基準の達成に向けて必要とされる取り組みの実証などに取り組んでいます。

 この度、協働する地域の一つである千曲市が、”世界中の観光地から持続可能な観光の取り組みに関する優良事例を募集し、高い評価を獲得した100地域が選出されるGreen DestinationsTOP100選※”に選出されました。
 千曲市のTOP100選選出の立役者である​​(一社)信州千曲観光局の取り組みと思いを取材しましたので、ご紹介いたします。

評価された千曲市の優良事例「地域と未来をつなぐ『NEOネオン』」

 戸倉上山田温泉街の特徴である“昔ながらのスナック”と“ネオン看板”。近年の旅行形態の変化等による観光客の減少や、経営者の高齢化による店舗数の減少など温泉街のアイデンティティが失われつつありました。

 そこで(一社)信州千曲観光局が主体となり立ち上げた「NEOネオンプロジェクト」。ここでは、スナックの遊び方や入り方を分かりやすく発信し楽しみやすい環境づくりに取り組んでおり、新たな若い世代のファンづくりや地域の文化の維持に大きく貢献しています。地域のアイデンティティを観光により未来へとつないでいく「NEOネオン」が、持続可能な観光地の優良事例(グッドプラクティス)として選出されました。

Specialトーク(一社)信州千曲観光局インタビュー 
信州千曲観光局が目指す「サステナブルな観光まちづくり」とは

千曲観光局:千曲市は鉄道や高速道路のインターチェンジが整備され、交通の要所が揃った非常にアクセスの良いところです。県庁所在地である長野市に隣接しており、鉄道や高速道路を使えば、軽井沢といった人気観光地にも短時間で行ける。まさに、”長野の周遊観光のハブ”として、滞在できることが強みと考えています。観光資源としては、名勝姨捨山、戸倉上山田温泉、森のあんず等々があります。

戸倉上山田温泉を長野県全体の観光地戦略における滞在拠点の一つとして、色々なエリアに行ける仕組みを作っていく必要性を感じています。

機構:サステナブルな観光地域づくりにおける、千曲市の課題とは?

千曲観光局:千曲市は戸倉上山田温泉という大きな箱があるので、以前は、バスツアーなど従来からの団体旅行スタイルが多数を占めていました。また、忘年会などで地元千曲市や、近隣市町村の皆さんが使ってくださるといった地域の団体需要も多くありました。現在では、新型コロナウィルス感染症の流行等により団体客が減少しましたが、観光地マネジメントとして、減少した分のリカバリー対策、体制が構築されていませんでした。従来のイメージが払拭されず、変化を嫌う地域であったことも、体制構築が進まない要因の一つでした。
観光によって域内消費額を上げるという大きなミッションがある中で、サステナビリティをキーワードとした「観光まちづくり」といった視点は大切な1つです。受入環境・体制の構築をするにあたり、まだ感度の高まっていない地域・住民の意識をどのように変革し、実現していくのかが課題でした。

機構:そこから、どのようにNEOネオンの構想がうまれたのでしょうか

千曲観光局:はい。方法論がわかっていない中での観光まちづくりとしては、何かランドマーク的なものをいくつか作っていかないとならないと感じました。
”周遊観光のハブ拠点”となるためには、滞在する理由が必要です。そこで、戸倉上山田温泉の文化である「スナック」に着目しました。次の世代にスナック文化を継承するにあたり、夜の町についてのネガティブなイメージも変えていかなければならない。
次の世代の顧客層へ届くコンテンツとして、戸倉上山田温泉が持つ「ナイトコンテンツ」に滞在いただき、昼間は県内各地へ観光に行ってもらう・・・そんな構想を形にしたのが、NEOネオンです。

千曲観光局:温泉の泉質もよく、「昭和レトロ」の町並みが素敵な戸倉上山田温泉を次世代に残して行きたいという想い。スナックは観光資源として楽しいけれど、団体客利用が減少して町の活気がなくなって来ていた中、新しい光が必要でした。そこで3年前、次世代に、スナックの扉をあけてもらえるような仕組みづくりをしました。具体的には、若い世代・女性も安心して入店できるよう、ホームページにスナックの内装や料金、ポリシーも公開しています。スナックをホッピングして回るツアーや、しなの鉄道と連携し電車内でスナックを開店する企画なども開催しています。

機構:昔ながらの事業者さんが多く住む町ですが、巻き込みはどのように行いましたか

千曲観光局:一軒一軒、膝をつき合わせてお話しをしました。約60のスナックのうち、18件のスナックに加入いただきました。スナックは、地元の人にとっても、観光客にとっても「なくてはならない場所」であり、未来に向けて持続可能な取り組みになる必要があることを重点的にお話しました。(ちなみに、最初の説明会にきてくださったのは、2人だけでしたが、コミュニティを盛り上げるための事業だったので、反対の声はほとんどありませんでした。)

機構:「NEOネオンが」TOP100選に選出されて、地域の方の反応はどうでしたか?

千曲観光局:地域の方からは好意的な反応をいただいておりますが、サステナブルというテーマ性が少し難しいため、理解が追いついていない方もいるのが現状です。
一方、市役所、地域の事業者からは、より好反応をいただいており、今後「観光まちづくり」を実施するにあたり、地域の方の理解の浸透を図るためにも、より情報共有と連携を大切に、取り組んでいく必要性を感じています。

画像:NEOネオンに加入するスナック“JOY”の千穂ママ

<観光機構の取材中、NEOネオンに加入するスナックのママからは、「NEOネオンのサイトを見て、若い女性や、ビジネスでの滞在者が来てくれるようになった。旅に来ている人と地域住民との出会いと交流の場になっており、そこからまた新しい仲間が生まれて、面白いことが起きている」というお話も聞くことができました。>

NEOネオンの認知度が上がってきたことにより、エリア全域のイメージとして、定着してきました。スナックに訪れることで、住民と旅人が繋がる「扉」を開くような、最初の一歩、きっかけとなってくれれば良いと思っています。

機構:今後、地域と一緒に取り組んでいきたいことは?

千曲観光局:現在戸倉上山田温泉に来ている顧客層は60代、70代が多く、受入側としても飲食店やホテル従業員の高齢化が課題となっていますので、若い人を取り込んでいく取り組みが急務です。
そこで、「サステナブルな観光まちづくり」として、観光DXの分野に取り組んで行きたいと考えています。  具体的には、地域OTAを機能させて、インバウンドも含めて千曲市に人を引っ張ってくるための、デジタルを活用した動線の強化を図っていきます。
地域が継続していくための新規顧客を取り込むアプローチを、今までチャレンジしてきた観光資源と掛け合わせてブラッシュアップをはかり、地域へ浸透させていければと思います。

機構:最後に、TOP100選の申請について大変だったことや感想、これから申請する地域についてアドバイスがあれば教えてください。

千曲観光局:申請のアセスメントを作成するにあたり、観光では直接関係したことがないセクションの作成が大変でした。でも、アセスメント整理をきっかけに、市役所の観光課だけでなく、農林課や色々なセクションと繋がることができたのは、良かった点です。

アドバイスは、アセスメントの整理や数値化など大変なこともありますが、「まずやってみる!」ですね。
今後の事業計画を作る際にも、今回の整理、繋がりは役立っていくと考えています。

行政の取り組みは、どうしても縦割りになりがちで、抽象的で具体性に欠けるものも多くあります。観光という魅せ方においては、千曲観光局がマネジメントし、市の取り組みを横断できるような関係性を作っていければ良いです。

画像:NEOネオンの温泉街

信州千曲観光局の皆さま、貴重なインタビュー誠にありがとうございました。
※記事の内容は2024年10月時点のインタビュー内容を元に構成しています。

※Green Destinations TOP100選について

持続可能な観光に関する国際認証団体であるGreen Destinationsが主催し実施しており、毎年、持続可能性に関するテーマ別に世界中から多くの優良事例が選出されています。

※「持続可能な観光/サステナブルツーリズム」とは
「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」(持続可能な観光の定義/UNWTO)

本記事の内容、Green Destinations TOP100選についてご興味がある方は長野県観光機構パブリック事業2部(026-219-5272)までお問い合わせください。

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